おおロミオ、ロミオ!
「あなたはどうしてロミオなの?」
何のことかわからない若者も多いと思いますが、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」に記された一節です。なぜ、このような悲劇が起きることになったか。長い目で見ると、生物の進化の結末でもあると思うのです。

有性生殖
生き物とは生きて子孫を残すもの。
最初の生物とされる単細胞生物は、しごく単純に、自らと同じ細胞を増殖します。
たまに突然変異が起こるにせよ、原則として親と同じ形の子が誕生します。分裂と言ったほうがいいのかな。
とにかく、親と子は全く同じ遺伝子をもったクローンになるので、顕微鏡で覗いたときに、親子が並んでいても、どちらが親か区別はつきません。
ゾウリムシやアメーバ、大腸菌などがこの類で、増殖の方法は当然無性生殖です。
このまま単細胞でいれば平和だったように見えるけど、そうはいかない。常に変化をするのが生き物なのです。
例えば大腸菌の場合、湿気のある地中にいれば数か月間、生きて子孫を残すことができる。ところが渇いた土の表面に出ると寿命はたったの数時間。
でも、たまたま突然変異がおきて、渇いた土の表面でも生きていける個体が誕生したら、大腸菌全体は、こちらの方にシフトをしていくことでしょう。進化の一端です。
こんな状況の中で、すごい勢いで進化をするシステムができました。オスとメスが協力して子孫を残す有性生殖です。
無性生殖と違って、突然変異に頼らなくても、世代が変わる度に、遺伝子の情報がかわるのが特徴です。画期的な変化ですが、多分よいことだけでは終わらない。
何億年も前に始まった生き物の歴史なので、想像がつかいないかもしれません。でも、これが現代まで続いて、人類の悲恋、幸福、戦争などの諸問題に、尾を引いているのではないかと思う。
そういえば、以前地球上に生物が誕生する時に、細胞の基となる核酸という高分子にはそれぞれの個性があった。これが今の人間の個性につながっているのではないか、ということを記したこともありました。
有性生殖とは、まず1対になっていた母親の遺伝子が離れて半分になります。父親の遺伝子も半分ずつに別れます。
そして受精が起こると、半分ずつの遺伝子が合わさって、親と同じように1対の遺伝子をもった子供ができるというものです。
リンゴ半分と桃半分を合わせて、ミックスジュースを作るようなもので、できたジュースはリンゴにも似ているし、桃にも似ている。でも、どちらでもない。
こんな過程なので、親とは似ても似つかぬ子供ができることもある。この子の本当の父親は誰か、なんていう話も起きるわけですが、これはまた別の問題です。

多様性
ともあれ、子供の遺伝子が親と違うということが大切なので、例えば10人の子供が生まれた場合です。これが無性生殖の時のように、同じ子供ばかりだとしたら、ウイルス疾患や、極寒の環境に晒されると全員が死んでしまう。
でも10人にそれぞれの個性があれば、何人か生き残る。
新型コロナウイルスは人類にひどい爪跡を残して、下火になりつつありますが、感染して亡くなった方もいれば、元気なまま通り過ぎてしまった方もいます。
これこそ多様性による生き残り戦術なので、めったなことで種は滅びない。
念のため、この場合の多様性は、最近、騒がれている性的マイノリティーとかジェンダー平等の多様性とは質が違います。
このように有性生殖を始めた生物は、遺伝子を書き換えながら、あらゆる困難を乗り越えて、進化の速度をはやめてきました。
一方で、有性生殖ほど手間のかかることはなかった。
まず、第一段階としてオスとメスが出会わなければならない。出会っただけではだめで、オスはメスの気にいられなければならない。
孔雀が羽を広げてメスにアピールする場面を想像してみて下さい。天敵に対して、ここにいますと言っているのと同じです。
さらに恋敵が現れると、戦わなければならない。なぜ、こんな危険を冒してまでメスを探すのか。
性には強烈な快楽が伴うからです。
進化論の中で、人間は最先端にいることになっていますが、この辺りから野生の動物と、人間における共通点と相違点が浮き彫りになってきます。
例えばライオンは1頭か2~3頭のオスと、大勢のメスで群れをつくります。
オスは多くのメスと交尾をすれば、自分の遺伝子がたくさん残る。メスはできるだけ強いオスと交尾をすれば、強い遺伝子が残る。
その後は群れで子育てをすることになるのですが、オスの子は成長する頃、親にとっては有性生殖のライバルになって、群れを追い出される。
生涯、親子が仲良しであるはずもなく、老人の介護などとんでもない。
これがライオンの生態だけど、当然のことながら人間にも生物の本能は残っています。
浮気がばれて辞職をした国会議員もいたし、殺人事件は親子間で起きるケースが最も多い。人間の美徳は生物界の非常識でもあり、ライオンが聞いたら、腹を抱えて笑うかもしれない。
最近は手間ひまかかる有性生殖や、負担の多い子育てを敬遠する人たちが増えた。人口減少の問題が起きているし、進化の結末はどこに落ち着くのでしょう。

