院外茶話
私はウソを申しません

豆腐は豆腐屋で 小学校に入ったころは広尾に住んでいた。今でこそ高級住宅街だけど、当時は空地がいっぱい。防空壕で遊んでいた。冷蔵庫がなかったので、生鮮品の買い置きはできず、夕方の買い物はほぼ毎日のこと。母は買い物篭をもって […]

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自由が丘の眼からうろこ
スーちゃんは好きですか

Oさんの受診 Oさんはあまり身ぎれいな方ではない。たいがいは髭が伸びて、着ている服もよれよれだった。古希を迎えて身だしなみには関心が薄れてしまったかもしれない。 Oさんはメガネをはずしてシャツの裾でレンズを拭きながら、も […]

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院外茶話
余生の終わり

長寿 義父は瀬戸内海の小さな島で生まれた。能美島という。お寺の九男坊で、実家の寺は長男が跡を継いだ。他の兄弟もたいがい仏門に入ったけど、義父は医師の道を選んだ。 当初、広島市民病院に勤務をしており、たまたま原爆が投下され […]

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院外茶話
余生の始め

引退 義父が尾道を出立したのは、翌9日のことである。小さな鞄一つで我が家にやってきた。「いつまでおるかわからん。おいてもらえる間はおるで」来るとは聞いてはいたが、どうやって迎えればよいか、考えてもいなかった。とにかく以前 […]

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こころの生い立ち
こころの14:ダーウィンが行った

進化論 ダーウィンが進化論を唱えたのは1859年。種の起源という。当然、万物は神様が作ったとするキリスト教にとっては不都合な内容で、ずいぶんと反撃を受けたけど、裁判にまではいたらなかった。 もし、進化論の内容について公の […]

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院外茶話
温泉癒し旅1:陽だまりのバス停

沢渡温泉  毎日同じような暮らしをしていると、無性に旅がしたくなる。そんな時にはなるべく自然の豊かな温泉場を探す。ただし、いつ気が向くかわからないので、直前になって人気の宿を予約するのは難しい。そこで狙うのは、比較的小さ […]

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院外茶話
老いの達人

出立 義父は皮膚科の医師である。長年尾道で開業医をしていたが、80を越えて今年はやめる、来年はやめると言いながら数年が経ち、5月8日、半世紀の間続けた医院を閉じた。最後の診察日には3人の患者が訪れた。 義父が尾道を出立し […]

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院外茶話
最高の余暇

今日は明日のために 働きすぎと言われていた日本人のなかでも、最も忙しい日々を送るのは多分30代。30代の人たちを中心に、日本人が思い通りにもてないのが余暇。その少ない余暇を、人々はどう過ごしているのだろう。 天気がよい日 […]

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こころの生い立ち
こころの13:心の土台

知能の進化 道具、火、芸術あるいは言葉、宗教など。 これが人と動物の違いと言われたけど、猿は石の斧を使うし、ウグイスは必要以上にきれいな歌声を聞かせてくれる。道具も音楽も人間の専売特許ではない。 特に群れを作る高等動物に […]

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こころの生い立ち
こころの12:心の誕生

脳の誕生 地球上に現れた最初の生物はシアノバクテリアで、それは40億年も前の話。ただ、この単細胞の生物も突然現れたわけではなく、もとは糖やリン酸を含む小さな分子であった。これが連なって大きな遺伝子となって、この遺伝子を膜 […]

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こころの生い立ち
こころの11:心のルーツ

進化と心 カッコウはホオジロやオナガなど、他の鳥の巣に卵を産んで、孵った後の子育てもまかせきり。こんな具合だからカッコウは、一生自分の親に会うことはない。そのカッコウの雛は成長をすると、また別の鳥の巣に卵を産む。親に教わ […]

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院外茶話
緑内障5:高齢者の場合

高齢者の緑内障治療 若い人は早期発見と早期治療。年をとったら生涯通院を続けて検査と目薬。緑内障の話題は紙面やネットにあふれていますが、中でも公の学会や医師会の情報が比較的公平で、よく整理をされていると思います。ここでは、 […]

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こころの生い立ち
こころの10:心の芽生え

生殖細胞と体細胞 赤ちゃんの誕生は卵子と精子が合体するところから始まります。この受精卵は分裂を始めて1個の細胞が2個、2個が4個、4個が8個と、猛烈な勢いで増えていきますが、どれも同じような細胞ばかり。一つ一つの細胞が将 […]

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院外茶話
仮屋村の和尚さん

仮屋のお寺 源頼光が大江山に住む大蛇を退治に行く途中、若狭に仮の陣屋を設けて3年間滞在した。その地を仮屋村と言う。妊婦が出産のときに一時的に籠ったり、あるいは不浄とされた月経の数日間、籠ったところを仮屋村という。何が本当 […]

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院外茶話
仮屋村のふみちゃん

熊川から 京は遠ても十八里。小浜でとれた新鮮な鯖は傷まないように、ひと手間かけてから若狭街道を通って京都に運んでいた。 途中必ず通るのが熊川の宿場町で、その熊川が最も発展したのは江戸の初期。魚に限らず米や豆や様々な物資を […]

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院外茶話
仮屋村のてる婆さん

嫁に来て 我が家はもともと若狭の仮屋村にあった。小浜から10キロほど離れた山村で、てる婆さんは隣村の熊川から嫁にきた。馬に乗って。  婆さんはここで9人の子を設けて、その長男が私の父。しかし当時は満足に育たない子供が多く […]

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こころの生い立ち
こころの9:氏か育ちか

蛙の子は蛙 三国連太郎は勲章ももらった名優だけどあまりに奔放な人生で、家族にはずいぶん迷惑をかけた。子供の佐藤浩市はそんな親を嫌って長い間、口も聞かなかったそうだけど、気がつけば俳優になっていた。似たような諺があって「こ […]

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院外茶話
緑内障4:白内障手術体験

手術の決意 緑内障シリーズですが、私が受けたのは白内障の手術なので、今回はその体験記です。 白内障は水晶体が濁る病気で、手術以外に治す方法はありません。では、どうなったら手術をするか。手術を行う時期は人それぞれで、細かい […]

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こころの生い立ち
こころの8:自分探し・科学編

人の中心 トカゲは追われると尻尾を切って逃げる。タコはあまり空腹になると自らの足を食べる。もし足一本で満足しない場合、二本目の足を食べて、またその次を食べて、最後にはどこが残るか。話はタコだから謎々のようだけど、これが人 […]

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自由が丘の眼からうろこ
自由が丘遺産3井戸

井戸巡り 渋谷から自由が丘に引っ越してきたのは昭和34年。今でこそ若者や外国人に人気の渋谷で、大規模な再開発の途中だが、当時はまだまだ戦後の面影を色濃く残す街であった。 小学校の屋上は焼夷弾が落ちた跡で凸凹。あちこちに空 […]

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